晩酌と相撲好きのブログ

毎日ビール2本程度の晩酌とおいしいつまみ、そして大好きな相撲を愛しているアラフォー妻子あり男の心の内です。たまに本業の教育分野に関することもつぶやいたり。暇つぶしに見てやってください

「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」を読んだ



バラエティー番組「ホンマでっか!?TV」への出演でも知られた流通ジャーナリスト、金子哲雄さんの著書を読んだ。
2012年10月に亡くなってから早や10年。そんなに経っていたのか。金子さんのテレビでの存在感は大きく、私の記憶の中に強くそのお姿が残っていたせいかもしれない。

なんとなくスマホいじりの最中、Amazonでポチって購入した。

その遺作、タイトルはズバリ「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」。
亡くなる一か月ほど前から執筆されたという本書は、金子さんの仕事内容やそのこだわり、また、遺された者たちへの自分の役割、また、死に直面する本人の心情など
いずれ誰しもが必ず迎える「死」との向き合い方の一つを疑似体験させてくれる一冊だ。


金子さんご自身の半生や、病気発覚以降の様子、また、奥様のあとがき(といっても40ページほどの大ボリューム)により本書は構成されている。

後半になるにつれ、金子さんの「生」への臨場感が迫力を持って表現されてくる。最後の奥様のあとがきにより、金子さんご自身が書けなかった死の間際、そして死後のことも
追記され、本書は完成となった。


自分の死期が直近に迫った人が、人生の終焉のための準備を進めながら自分の心情を詳細に記し、家族の協力を経てリアルな終活を発信する。
そういった書籍を、私はこれまで読んだことがなかった。

奥様のあとがき部分には、当然金子さんご本人には記述不可能である詳細な、死亡時・そしてその後の描写もある。


何にしても、とにかくリアル。本書の出版が10年前ということを実感するのが、本書に「終活」という言葉が出てこないことだ。
終活という言葉が造られる前の出来事であり、年月の経過を感じさせられる。
その一方で、金子さんの仕事への意識や終末期医療に対する選択、周囲のサポートなどメインとなる内容については時代差は感じなかった。
しいて言えば、10年経った今なら、金子さんであればテレビなどのメディアに頼らずともSNSやブログを通じて世に影響力を与えていただろうなあと
多少は年月の経過を意識する程度か。
Twitterで検索したら金子さんのアカウントが見つかったし、2012年当時からきちんと運用されていた!亡くなる1か月ほど前まで更新されている。
やはり仕事で結果を出す人は違うなあ…。

この記事を書きながら、読後よりもさらに金子さんのスゴさ(語彙 )を体感してしまっている。

 

本書のメインテーマとは関係ない部分もあるが、私が本書を読み終わり勉強になったことがある。
それは
・仕事の速いことは、仕事の質に直結する
・常に頭の中で考えていることのアウトプットこそ仕事にすべきだ
・死後は多少なりとも周囲がもめる可能性大
の3点だ。

金子さんは病床(自宅療養を選択された)でも様々な仕事をあえてこなしてきた。
病身でありながらも仕事を成立させてきた(病気のことはごく身近にしか伝えていなかった)のは紛れもなく
仕事の速さに他ならない。チンタラちんたらプロデュースしていても良いものはできにくい。
もちろん、もともとの金子さんの「人生の修練」によるものが大きいのだと思うが、一「一般人」の私としても、仕事の速さって正義だよなと思い直す機会を得た。
仕事の速さと質の高さは、病床での業務遂行を可能にする。金子さんには感服仕る。

金子さんは常に、いろいろな店舗を自分の足でめぐっていた。そこからお得情報に絡めた経済情勢を伝えるためのネタを蓄えていった。
常に「何かネタはないか」という貪欲さは仕事の成果に直結する。幼少期から筋金入りの「お得マニア」である金子さんは、いかなる時にも自分の能力をアップデートし続けていたように思う。

 

自分に遺産がなくとも、自分の死後に周囲がもめることは可能なのだそうだ。
例えば葬式代は誰が出す?そもそも葬式をどの業者に頼む?誰に案内を出す? などなど。 
そういったことを先回りして決めてあげることで、遺された者と周囲との軋轢を、現在も、そして将来にわたっても無くす必要が、死にゆく者にはあるのだと思う。
しかし、それを末期症状の患者の立場で実際にできるだろうか?
今の私の精神力では到底できやしないだろう。

 

金子さんは享年41歳。
今の私より若い。いつの間にか、あんなに「おじさん」だと認識していた当時の金子さんよりも年上になってしまった。
焦りしかない。金子さんのように冷静にふるまえるのか?こどおじの42歳、来月43歳はマジで焦りしかない。見た目はオッサン、中身はコドモ!は私のことである。

 

本書を読んで一つ感じたのは
金子さんと奥様の表現内容の違いだ。
金子さんご本人のパートは理路整然と、冷静につとめながら仕事のことや病気のことを執筆なさった(あえて心情を挿し込んだ箇所はもちろんある)が、
奥様のパートには奥様ご本人はもとより、金子さんのリアルな言動も包み隠さずあとがきされている。

おそらくは、金子さんのパートには、マジの弱音だけは書かないようにしていたように思う。
一方、奥様のあとがきにはマジの金子さんが描かれていた(特に最期の方)。
そりゃそうだ。人間、誰しも100%落ち着いて死を迎えられやしない。感情も出てしまう時もあるだろう。
というより、それが普通だ。

 

金子さんの死因となった「肺カルチノイド」。
金子さんの願いとして、この病気のことが広まることを挙げていたが、恥ずかしながら私は本書を通じて初めてこの病名に出会った。
10年経っても肺カルチノイド知名度は低い。直訳すると「肺がんもどき」。
肺がんに準じた治療方針をとるらしいのだが、
非常に症例の少ない病気で研究が進んでいない。10年経った今もって。


これから数十年~数百年以内に「死」の予定がある皆さんには、ぜひとも一度、読んでみてほしい一冊だ。「死」の予定が無い方にもおススメだ(カーズにもおススメだよ)。


41歳と言えば、あのスラムダンクに登場する陵南高校の指導者、田岡茂一と同じ年齢だ。
あの田岡が私よりも年下だと??
ないない。

スラムダンクの登場人物は全員、プラス10歳で考えなければならないと思う。)

 


人間、生まれてからは死に一直線に向かっている。
ぜひともここらでいっちょ、「死に準備」を整えてみてはいかがだろうか?
準備は都度アップデートしていってもいいだろう。
遺されるものの幸せを願い、過ごしていこう。

(とりあえず、いかがわしいサイト閲覧履歴消去するんだぞ!俺!)