晩酌と相撲好きのブログ

毎日ビール2本程度の晩酌とおいしいつまみ、そして大好きな相撲を愛しているアラフォー妻子あり男の心の内です。たまに本業の教育分野に関することもつぶやいたり。暇つぶしに見てやってください

ヤクルト出す床屋さん

私は大学が地元で、子どもの頃からずーっと、社会人になったあたりまでは実家住まいだった。

 

今、その実家は移転し当時の地域との縁はなくなった。
しかしごくたまにその辺を通りかかることがある。住宅街なので狙って行かないと通りかからない場所だから狙って行くのだが…。

 

今思えばかなり良い立地だったと感じる。
駅からも比較的近く(一応、駅前はうちの中学の学区内だ)、当時に比べ店々もどんどん出来上がってきている。

私が住んでいた二十数年前に比して住宅の数が200%ほどになった。昔からある家々の隙間に広大な空き地(無理すれば野球ができるほどの)が点在していたのだがすべて宅地化され新築住宅で埋め尽くされた。

中には崖のような直径数十メートル、深さ15メートルほどのクレーターが全て埋め立てられ住宅が立ち並んでいた。クレーター時代を知るものとしては決してそこに住みたいとは思わないが…。沈むでしょ…。盛り土の土地は買わない方がいいよ。

 

学校も近い、いや、小学校はどこに住んでいてもたいてい近いのであるが、
高校と大学が徒歩圏内にある。

県ナンバーワン高校と県唯一の国立大学だ。黙ってしっかり勉強していれば通学に苦労することはない。が、それがかなうのはこの地域でもごくごくわずかな努力家だけだ。
(本当に優秀なやつは旧帝大に行ってまうがそれは除外。)

 

その旧実家の近くに大きな土手がある。
晴れの日は格好の散歩コースだ。住んでいた当時は全く価値を感じられなかったが今はそこのありがたみが分かる。

徒歩で5分もしないうちに土手の端までいくと線路、そして川をまたぐ鉄橋がある。この地域唯一の欠点と言えば電車の通過音がうるさい(特に貨物列車は長く騒音が大きい…)ことだがこれは慣れる。断言する。線路沿いに住んでいる人は電車の通過音をうるさいと感じなくなるのだ。これはここに住んでみて初めて分かったことだ。

 

この土手の端にまたがる鉄橋の下をくぐると小学校区が変わり隣の学区となる。

そこから徒歩で5分くらい歩くと「理容松川(仮名)」がある。
中学から大学の頃まで利用していた。

 

その床屋は散髪が終了すると横のソファにてヤクルトを1本飲ませてくれるのだ。
なかなかに珍しい床屋だと思う。
高校生になり始めてヤクルトを尻目にポケットからタバコを取り出し火をつけようとすると店主のおばちゃんが「何吸ってるの?」と聞いてきた。
マイルドセブンです」と答えると色鉛筆を収納する筒みたいなものを持ってきて

「この中から一本取っていいよ」

とのことでいただいた。おおらかな時代であった。
筒の中には何百本もの雑多な銘柄がごっちゃに、しかし几帳面に詰め込まれており圧倒される。

一本吸い、ヤクルトを飲み干して帰る。
理容松川での私の、いや、多くの男性のルーティンだった。

 

今日、その辺をほっつき歩いていたらまだまだ現役でその理容店は営業していた。
おばちゃんと娘二人、現在はおそらく娘が主体であろうが態勢が整っているのであろう。

 

思い出がよみがえる。中学生の時に散髪しているとすぐそばにある工業高校の野球部生(ユニフォームのまま来たのですぐに判明)が「すぐにボウズにして」と駆け込んできた。

どうやら、若干スポ刈り気味にしたのが練習中の今、監督にバレたらしく今すぐ直してこいとの事らしい。
騒々しかったがなんだかおかしかった。

 

令和の現在、各学校では禁止されているようだが高校生の頃はツーブロックにしていた。毎回同じ注文なので当然言わなくても分かるレベルになっていたがある夏、娘であるお姉さんから「お盆は親戚からお小遣いもらえるの?」と聞かれた。

まあチョっとくらいすかねー、などと返答すると

「もし小遣い入ったらストパーあててみてもいいんじゃない?」

という提案もあった。財政難により実現しなかったが提案はありがたかった。

そこから数年後、二十歳をこえてからやっと金をこしらえ別の美容室で縮毛矯正をあてロン毛にした。モテた。早くやっときゃよかった。

 

 

現在住んでいる場所には正直思い入れがない。地盤の強さと災害の少なさ、そしてコスパのよさだけで選んだと言っても過言ではないからだ。

ただ、子どもたちには生まれたころからいる場所だ。この子たちにはここが起点となり人生が展開される。願わくばよい思い出を多く作ってもらいたい。

すでに、近所のおじいさんがたが子どもたちをかわいがってくれている。大変ありがたいことだ。どういった道を子どもたちが歩むにしろ、ここが故郷であることを安心して思ってほしい。

 

以上、なんのエッセイだこれは。

また次回!