晩酌と相撲好きのブログ

毎日ビール2本程度の晩酌とおいしいつまみ、そして大好きな相撲を愛しているアラフォー妻子あり男の心の内です。たまに本業の教育分野に関することもつぶやいたり。暇つぶしに見てやってください

面談力のなさを克服した思い出

 

 


塾時代、キャリアの前半は苦戦していた。

何に苦戦していたかというと、「面談力」においてだ。
保護者や生徒との面談で、私の話す内容が相手に響かないのだ。伝わらないと言ったほうがいいかもしれない。

しかしキャリア後半はそれを見事に克服し、晩年は教室長である私の面談を目当てに入塾してくる人も少なくなかった。塾は口コミが命と身にしみた経験でもあった。

 

余談だが、キャリア晩年は「今年で辞めてやる」と決めていた。だから後任社員のためになるべく「自分色」を出さないように最後の一年間は色々なことにあまり出しゃばらないように気をつけて、影に徹するように心がけた。
にも関わらず教室長(自分)の噂が近隣の中学高校の一部に響き渡っていた。さすがに保護者・生徒面談だけは自分でやらねばならなかったからだ。

そう考えると、塾はその長の能力ですべてが決すると改めて思う。塾長が無能で講師が良くできた塾は避けたほうがいいだろう。逆なら大丈夫。塾は塾長次第で輝きもすれば漆黒に塗りつぶされることもあるのだ。

 

さて、面談力に悩んでいた時代の私が入塾面談で最初に話していた内容がある。

どうすれば成績が伸びるか?という生徒・保護者からの問いに対する答えだ。

私は決まって

「毎日欠かさず勉強してください」

だった。

そう言い放つと必ず保護者・生徒からは落胆もしくは怒りの表情が浮かぶ。そりゃそうだ。そんなことは言われなくても分かっている。
そうではなく、塾ならではのノウハウを聞きたいのだ。
そういったメッセージがその目からはありありと発せられるのだった。

 

稚拙だった。ただただ私の発する言葉が稚拙だった。そんなんで相手に響くはずがない。私はその後何年もの間、自分の面談力の無さに苦しむことになる。

 

ある年、直属の上司が変わった。新しい上司は死に体だった他の教室を流行りに流行らせた実績がある。新上司は「横について俺の面談を見て勉強しろ」と保護者との面談を私に見させた。

 

面談が終わると新上司は「な?お前とは違うだろ?お前の面談と俺の面談、どちらが保護者の支持を得られると思う?」

 

正直なところ、新上司の面談内容に特筆すべき点は見当たらなかった。むしろ私のほうが学習に関する役立つ深い部分まで話ができると感じた。しかし実際、その薄っすい面談で新上司は過去に塾を流行させた実績が確かにある。

 

何が違うのだろうか?

 

私は思い悩んだ。新上司が担当した入塾面談を経て入塾した生徒への、新上司の対応を見て私は気づいた。

生徒によく気を配って話しかけていたのだ。結構な上から目線(新上司が50代という年齢もあるので成立する)での言葉がけだ。でも生徒は新上司と話すことで徐々に信頼を寄せるようになってきている。

 

などなど強引に気づきを得ようとして上記のようなことを考えたりしたのだが、結局は特別なことは何一つ新上司はしていないのだ。だた一つ、私との違いは

自分の話を押し通す

ということだけだった。
押し通す、というと語弊があるかもだが要は新上司自身の発言にブレがない(ように見せる)ことが大切。自信をもって(いるように見せて)生徒と接する。これが生徒が信頼を寄せる入り口としていることを学んだ。

 

そこからの私の面談力は上がっていった。この新上司とは(とも?)いろいろあったがこの学びを得られたことは感謝している。(でもいろいろあったね。まあいいや。)

しかし面談力で悩んでいたキャリア前半同様、入塾面談では相変わらず「毎日勉強しましょう」を発言しまくっていた。ただ、以前と違うのは「なぜ毎日勉強せなならんのか」を納得感をもって説明できていることだと今振り返ると思う。

 

なんとかの一つ覚えのように「毎日勉強せえ」と唱えると同時に、「逆に、思いついた日に勉強する程度で成績が上がったお子さんはいらっしゃいますか私は一人も知りません」

「あなたが所属している部活のレギュラーメンバーで、気が向いた日にだけ練習している人はいますか?」

「あなたの志望している学校に合格した人で、毎日勉強しなかった人はどれだけいると思いますか??」

などとビーンボール級の質問をバッシバシ放り込んだ。当然相手は何も言えない。

 

私はさらにこう続ける。

「毎日勉強することは全っ然特別なことでもなんでもないんです。」

「毎日勉強は単なる入り口に過ぎません。ディズニーランドのゲート通らずしてディズニーランドに入れないし楽しめませんよね?」

などと会社の研修で一回しか行ったことのないTDLについてさも知っているかのようにしゃべるのも優秀な教室長としての役割である(たわけ)。

 

 

その後、私は保護者・生徒に向かって決まってこう伝える。

「毎日勉強は誰でもできるようになります。あなたも必ずできます。明日から毎日ウチの自習室に学校帰りに通ってみてください。やってみますか?」

これで9割以上の生徒は「はい」と答える。ごくまれに「いや、やりません」と頑なな拒否をぶちかます生徒さんもいるがそこは私の不徳の致すところ。他塾で頑張っていただければ幸いだ。

 

入塾面談で掴んだ生徒の心はその後の学習指導に直で活きる。もともと学習指導には自信があり、その内容も質の良いものという自負もありまた、そうこうするうちに生徒たちの行動とそれに伴う結果がついてくるともう保護者からすれば塾様々である。

 

細かく言えば、市場からの支持を得るためには各学校の情報収集を徹底的に行うことなどが必要になる。
例えば秋田高校の生徒が夏期講習前に入塾面談に来たときに「秋高の講座(夏期補習のこと)は日数が多いよなー」などとナチュラルに言えば「え?なんでそんなことまで知ってんの??」と相手の目線が変わるし南高校志望の生徒には「入学式の前に百人一首ぜんぶ覚える謎の宿題出るから気をつけな。毎年の伝統な(現在は廃止)。」などと付加情報を提供することもできる。
全ては通ってくれている生徒たちとの対話から得られるものだ。当然、学習指導にも役立つ。めっちゃ。

 

ときには本気で他塾を勧めるときもある。まあ、大体がこちらでお預かりするのが厳しい(預かったら無用なトラブルが発生することが目に見えている)場合だが中には通塾距離や志望校の関係で他塾のほうが結果を出せると確信するときがあり、その際は躊躇なくその理由とともに他塾利用を促す。

 

そんなことをやっているうちに私を名指しで指名してくるご新規さんが増えていった。ほぼ100%塾生からの口コミだ。大規模教室でこういったことはあまりないのではないかと勝手に思っている。小規模教室だと結構あるんだけど。

 

 

こういった経験から、自分の考えを押し通すことへの罪悪感が消えていった気がする。もちろん、常に自分の考えが正しいと盲信することは愚かなことではあるがそうではなく、ちょっと他者から反論があったときに無条件降伏するようなことはしないようになった。その他者が誰であれ。

 

根拠を持った考えは押し通す、というかきちんとその理由を説明する。相手に伝わるように自信をもって伝える。これは社会で生きていく上で役立つ。役立たないことなどないしもしかして必須の能力なのではないかと思う。

 

 

今一度自分への戒めとして今回の記事を上げます。ほんの一部分でも参考になれば幸いです。